A 事業継承の方向性
1 株価は、税法上最低水準にするのか、M&Aの適正価格にするのか、高い株価を目指すのか。後継者には、贈与か売却か 後継者の資金力はあるのか
2 継承者のモチベーションアップ、新報酬をどう考えるのか
3 将来上場の可能性を検討するか 持株数十億円となる可能性
4 現社長の引退スケジュール
来年会長→○年非常勤相談役→○年完全引退→○年株保有0%
5 新社長の持ち株比率アップの比率とスケジュール 来年○%、○年後○%
6 現社長の給与はどのくらいの金額をいつまでもらうのか、いつ退職金をもらうのか。
7 増資、ストックオプション、種類株、持株会等の検討はするのか
8 後継者の経営力育成と信用の維持向上の見極めをどのように、いつ判断するのか。後継者による事業計画の推進とその達成度をメルクマールとするのか
9 MBO、ファンドの活用、事業継承円滑化貸付、外部へのM&Aなどを検討するのか
10 個人保証、貸付金などの処理、公私混同、人間関係、顧客関係の整理
B 事業継承時の株式譲渡ポイント
1 株式対策はまず、贈与することから
(1) 贈与はどんな会社でもどんな状況でも必ず実行できる
(2) 贈与の効果は薄いといっても続ければ効果はある
(3) 贈与を毎年繰り返せば少しずつでも確実に自社株は移動する
(4) むやみに複数の相手に分散すると、後でかえって困ることになる
贈与といえば基礎控除(110万円)の範囲内と考える必要はなく、基礎控除を超えて贈与してもかまわない。
決算期までに株式を贈与すると前年の決算数値を基準に株価を算定しますが、決算期後に贈与すると株価を算定するときに基準となる数値がその期の決算数値になる。
2 「配当還元価額」で贈与する方法
(1) 同族株主以外の少数株主は特例的評価方法により評価する
(2) 同族株主以外の人は配当還元による低い評価で相続・贈与ができる
(3) 配当還元方式は2年間の平均配当により10%を基準として評価する
そのポイントは、次の(1)~(5)の5つの条件を満たす人への贈与になります。
(1) 筆頭株主グループの議決権割合が50%超であること
(2) 一の筆頭株主グループの中に25%以上の持株割合のグループがあること
(3) 贈与を受けた者が次の「2」で示す親族に属さないこと
(4) 贈与を受けた者の議決権割合が5%未満であること
(5) 贈与を受けた者が役員でないこと
「同族株主」のいる会社においては、
次の(ア)または(イ)の株主が「零細株主」(同族株主以外の株主等)となります。
(ア)同族株主以外の株主(X)
(イ) 同族株主には該当するが、次の要件を全て満たす株主(Y)
(a)その全社の株主に、「中心的同族株主」がいること
(b)その株主自身(Y)は、その中心的同族株主ではないこと
(c)(Y)は、課税時期にその会社の役員ではないこと、また法定申告期限までの間においても役員にならないこと
(d)(Y)の取得後の議決権割合が5%未満であること
3 株式を売買するのも事業承継の効果的な方法
(1) 株式売却の場合、株は減少するが財産の合計額は減少しない
(2) 贈与ではもらった方に課税、売買では売った方に譲渡所得
(3) 株式売買の手続はきっちり行わないと税務上認めてもらえない
(4) 株式の売買には4つの形態がある
(イ) 個人が所有している株式を個人に売るケース
(ロ) 個人が所有している株式を会社に売却するケース
(ハ) 会社が持っている株式を個人に売却するケース
(ニ) 会社が持っている株式を会社に売却するケース
4 課税問題が発生しない税務上の売買価額
(1) 相続や贈与の場合は財産評価基本通達により評価する
(2) 所得税法上の時価は株主の分類によって異なる
(3) 法人税法上の時価は所得税法上の時価により算定する
『譲渡の時の価額』の所得税法上の算定での注意
☆ 「同族株主」に該当するかどうかの判定 ⇒ 譲渡前の保有株式数で判定
☆ 譲渡した者が「中心的な同族株主」の場合
⇒ 常に『小会社』として評価(純資産価額またはL=0.5とした併用方式
☆ 土地、上場有価証券は譲渡の時の価額で評価
☆ 1株あたりの純資産価額(相続税評価)の算定にあたっては、法人税等に相当する額(42%)を控除しない。
5 親子間で自社株を売買するときのポイント
(1) 親から子に自社株を売買すると親に譲渡所得税がかかる
(2) 安い値で売買すると買った方に贈与税がかかる
(3) 親子間売買はメリット・デメリットをよく検討し実行する
6 従業員等や別会社へ自社株を売買するときのポイント
(1) 従業員や第三者に売却する場合は配当還元価額で売却してもよい
(2) 関連会社に売った場合は売主・買主・株主に課税されることもある
(3) 売主個人には所得税が、買主会社には法人税がかかる可能性も ある
(4) 会社株主には法人税が、個人株主には贈与税がかかる可能性もある
財産評価基本通達による相続税評価額である自社株の時価は、その株式を買った人の立場で評価することになります。このため、額面金額で自社株を買った人が配当還元価額で評価できる人なら、所得税についても贈与税についても問題は生じない。
7 会社の規模を変更すれば株価は下がる
(1) 会社規模の判定の要素は従業員数、総資産価額、取引金額による
(2) 新規投資をすれば総資産価額が増え、評価引下げとなる
(3) 総資産のうちに占める土地または有価証券の割合に要注意
8 類似業種比準価額を上手に引き下げる方法
(1) 含み損や退職金の実現で利益や資産を圧縮する
(2) 株式相場の低迷時こそ自社株を贈与するチャンス
(3) 利益を重点的に配当、純資産価額を下げれば株価は下がる
9 純資産価額を上手に引き下げる方法
(1) 純資産価額は資産の相続税評価額から負債を差し引く
(2) 評価益に対する法人税等相当額(42%)を控除して計算する
(3) 退職金の支給、賃貸建物の建築その他の方法で価額は下がる
類似業種比準価額の評価引下げチャート
1株あたりの利益を下げる
・含み損の実現→利益も下がるし、資産も減少する
・ボーナスを増やす。役員昇格者・転籍者に退職金支給する
・借入金で資産を取得する
ただし、将来の収益を生むものに投資しなければ、無意味
1株あたりの配当を下げる
・直前2年間の配当額の平均で算定
・普通配当を減らし、「特別配当」「記念配当」を増やす
株式評価の基準となる配当額は小さいが、株主の手取りは多い
1株あたりの純資産額を下げる
利益を下げる方法の実現で純資産額も下がる
株価を下げて贈与・相続